

[長襦袢] [裾回し] [ぼかし]
茶席のきものには、無地に近いものが好ましいとされています。正装は豪華な訪問着ではなく、紋つきの色無地であることにもあらわれています。
表は無地でも、見えない場所・見えにくい場所に凝るのがお洒落なのは言うまでもありません。長襦袢や八掛などに工夫をし、
お洒落を楽しみたいと思います。

茶席では、主客の座が近く、お点前もお運びも、すぐ目の前での動作になります。ですから、道具を置いたときに袖口や
振りから見える襦袢の色が強く印象に残ります。
着物よりも下着に凝るお洒落心は、きもの道楽の贅沢な遊びかもしれません。
とても合理的な襦袢の遊びとして、色の染め直しがあります。
新しい白生地はまずそのまま長襦袢に仕立て、薄い色の着物に合わせます。少し汚れてきたら玉子色などの薄い色をかけて、
中間色の着物に合わせます。最後に濃黄に染めて濃い地の着物や小紋に合わせます。
長襦袢には無地のほか、ぼかしや小紋柄もあります。ぼかしは訪問着や付け下げなど改まった着物に向き、小紋柄は
無地や小紋などのお稽古着に向きます。夏の絽の長襦袢は白が主流ですが、着物と同系色の薄色を合わせると、表地の
色柄がより美しくみえるものです。


一色染めの江戸小紋や無地のきものは、若い方には地味に思えることがあります。そのようなときに華やかを加えるのが裾回し(八卦)のお洒落です。
留袖や振袖、訪問着などの礼装の裏は、表地に関連のある絵模様を染めて、裏とはいえ表地と同じように贅沢なものが見られます。
そこまでの贅沢さはないものの、手描き友禅やぼかし、小紋柄などの裾回しを用いることがあります。
茶席では、お運びの人の足さばきやお点前で立ったときなど、裾回しは意外に目立つものです。そのときに、表地の模様と裾回しの色・柄の調和がとれていると
お洒落上手な人、という印象に。
表地は地味な無地で、裾回しには明るい野の花を描いた春の袷。
水の流れに紅葉を散らした竜田川の裾回しをつけたきものは秋に。
江戸小紋のきものに、色違いの江戸小紋地の裾回しを合わせると2枚重ねのように見えて、冬にふさわしい装いに。
宝尽くしの付け下げに、七宝の柄の裾回しをつけて祝いの席に。
表よりも裏に凝る、という感覚は日本人ならでは。男性の羽織りも同様に、表地は地味な縞であっても、裏地には見事な龍が描かれていたり・・・
ただ、裾回しのお洒落で気をつけたいことは、あまり凝りすぎると茶席にはふさわしくないということ。
柄のものではなく、通常の八卦の色も奇抜な色あわせにするのではなく、同色か同系色が良いでしょう。


ぼかし、とは、染めの手法のひとつです。今から約1200年前の平安時代に生まれました。建築、文字、文学、女性の服装が日本化されたこの手法は、春の霞のように
情緒あふれる風景を表現するために登場したと思われます。
裾を濃くし、しだいに薄くぼかしていく形式を「裾濃すそご」と呼び、全体のところどころをぼかす形式を「班濃むらご」と呼び、区別します。平安時代の読み物の中にも、この裾濃・班濃という言葉が
登場しているので、大変古くからある古典的な染め方です。その時代から現代に至るまで、ぼかし染めは高級なきものの中に用いられてきました。
霞や雲、遠山や道長取りなどをかたどったぼかし染めが訪問着や付け下げに見られます。
絵模様のようにはっきりとはせず、ほんのりとした美しさを持つぼかしのきものは、無地に近い着物を好ましいとする茶席にふさわしいといえます。
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