

[5月] [6月] [7月] [8月]
[9月] [10月] [11月] [12月]
[1月] [2月] [3月] [4月]
[今月の装い]
日本には四季があり、四季折々の花や鳥、風景などをきものや帯の柄に写して楽しむことができます。また、行事にちなむ柄を用いて季節感を表現したり、
歴史や故事などにちなむ柄を使ってその季節との関わりを表すこともできます。
季節を表す装いとして花柄が第一にあげられますが、花の咲く季節よりも先取りで楽しみ、花の盛りまでとします。たとえば梅柄を三月に着るのは季節遅れで、十二月では早すぎるので注意が必要です。

◆きもの: 袷を着用。生地は一越縮緬や変わり縮緬、地紋のあるものなら紋意匠など。綸子は流水、波、笹、御所解きなどの
さわやかなもの。
色は中間色の明るいものが季節にふさわしい。染め模様なら初夏に咲く花、常盤木、風景、ぼかし染めなどが好まれる。
初旬は袷だが、中旬から胴単衣や紗や絽の袷などを季節に先駆けたお洒落として着用することができる。
◆帯: 錦織の袋帯は春と同じ素材が使われるが、色や柄は夏が近づいていることを感じさせるものがよい。多彩なものよりは
単彩に近いもの、また箔錦などの冷たい輝きを持つものも向いている。綴帯などのほかに、季節の風物を描いた、塩瀬羽二重や
縮緬の染め名古屋帯も軽やかでよい。絽や紗の袷には、夏帯の中なら地厚な品を選んで合わせる。
◆小物: 帯揚げと帯締めは春物をそのまま使用するが、色と柄を明るくして、重々しさや暗さをなくす。帯揚げは薄手の
縮緬や綸子。帯締めも細めの丸唐組や観世組、冠組など。
長襦袢は単衣で、夏の花模様やぼかしなど淡い色あいのものを選ぶ。半襟は塩瀬羽二重、足袋は白キャラコの袷。
履物は淡色のエナメル。
◆月々の花
桐・橘・百合・青楓・花菖蒲・かきつばた・あやめ・梨の花・竹(若竹)・卯の花・都忘れ
◆月にちなむ柄
花筏・[端午の節句]矢筈、鎧・[葵祭り]葵文、御車、山車
【初風炉の袷】五月は鮮やかな緑の季節です。5日が過ぎると立夏になり、茶の湯では立夏を境に、春から夏へ、炉点前から風炉点前へと変わります。
炉を閉じた後に入れ替えた畳は周りの畳より青々しく、初風炉の茶室の趣をいっそう深めています。
五月のきものは【袷】を着ます。諸道具も部屋も夏のしつらえなので注意しましょう。しかし、冬や春とは違う季節感を出すためにも
袷の中でもぼってりとしたものは避け、さわやかな色合い、薄手の地風、単純な柄行を選んで着るとよいでしょう。
きもの姿の美しさはきものの色、柄はもちろんですが、帯との組み合わせにより表情を変えることができます。五月、十月は
帯を軽め(染め帯など)にして、その色や柄、素材感でその時々の季節感を演出したいものです。牡丹や菖蒲、青葉楓、藤、鉄仙などの花を描いた白地の
帯などが軽やかでいいかもしれません。
また、野点席がさかんに行われる季節でもあります。汗ばむ日もありますので、そんな時には胴単衣(どうびとえ)を着るとよいでしょう。
胴単衣とは胴の部分を単衣仕立てにし、袖口、振り、裾には裏をつけたものです。着てしまえば袷と同じように見えます。長襦袢を中旬以降は絽に替えて、
それに塩瀬の半衿をかけて着るのも涼しく着る工夫のひとつです。紗袷などはしわになりにくく水に濡れても縮むことがないので、
遠出や水屋のお手伝いのときに重宝します。素材は紗でも袷仕立てなので問題ありません。

 
◆きもの: 着物は単衣に替わる。一越縮緬を改良した変わり縮緬や駒撚りの絽などが適宜に用いられる。
色は桔梗の紫、薊(あざみ)の赤、藍、利休鼠など寒色系の濃色が古典的な伝統色だが、現代では白っぽい色も着用する。
柄は露草、糸芒、百合など季節の花や風物の涼しげな感じが必要。
◆帯: 綴帯、塩瀬名古屋帯などの透けない帯地は、透けない着物に用い、絽綴、絽染め名古屋帯、絽、紗袋帯は透ける着物に
合わせるのが基本。中旬以降には、透けない着物の上に透ける帯を締めて夏の近づいた気分を表すのもお洒落。柄は季節の花や
有職模様が用いられる。
◆小物: 小物はすべて夏物を使用する。帯揚げは絽の無地やぼかし。帯締めは細めの組紐か、夏用の羅組のものがよい。
長襦袢は絽を着用する。色は白か澄んだ薄色の無地や小紋。半衿は絽の白。汗ばむ季節なので、自分で洗えるポリエステルなどの素材も便利。
履物はエナメルのかかとの低いものや、色パナマなどだが、着物や帯の色と同系色を選ぶとすっきりした印象になる。
◆備考: 単衣の季節の始まりは濃い色を着るのが昔からの習慣。小物には冷たく、澄んだ色を選ぶと涼しげになる。一般的には
半衿と長襦袢を着物に先駆けて絽にするが、お洒落な人は帯も絽にする場合がある。
◆月々の花
夏菊・月見草・笹百合・著莪(しゃが)・紫陽花
◆月にちなむ柄
扇面・団扇・蛍かご・[夏祭り]笛、太鼓
【梅雨の頃の単衣】六月に入ると着物は単衣に変わりますが、単衣には、透ける生地と透けない生地の2種類があります。梅雨が明ける前は透けないもの、明けてからは
透けるものと言われています。楊柳、東雲、高砂などという単衣向けに織られた柔らかい縮緬が単衣の代表でしたが、現在ではこれらを改良した生地が
変わり縮緬という名で売られています。
透ける生地の代表的なものは、駒撚りの絽でしょう。この絽は、絹糸の撚りを強くしたもので、普通の平織りの絽よりも厚手で
しっかりしているのが特徴です。六月から九月下旬まで着ることができるので、夏用のきものを一枚だけ用意したいという場合には便利です。
帯は夏帯になります。これもこだわれば、透けない着物には透けない帯を、透ける着物には透ける帯を、と考えます。綴、箔錦、塩瀬の名古屋帯は
透けない単衣に。絽綴や絽の名古屋帯は六月も半ばを過ぎてから用いるどの昔からの組み合わせが調和もいいようです。
紗の袋帯は人気がありますが、駒絽などの透ける着物に合わせるとよいでしょう。
長襦袢の色は白を選び、生地は絽になります。
半衿は絽の白、帯揚げも絽になります。

 
◆きもの: 単衣と薄物を着用。以前は梅雨の間は透けるものは着ないので単衣、梅雨明けとなってから薄物に変え、土用に入ると麻(上布)にしていた。
現代では、すべて七月の始めから着てもよい。
模様は夏草、水の模様が涼しげ。色もさっぱりとした白、濃紺、水色、薄鼠などが好まれる。
◆帯: 絽や紗の袋帯が結びやすい。色は白、黒、臙脂、茶、抹茶色、藤色など。帯の柄にきものと同じような夏草や夏の風物が多いので、帯ときものの柄を関連あるものにすると
お洒落。無地のきものに、草花の柄の染め帯で季節感を表すのもよい。
◆小物: 帯揚げは絽や紋紗の無地や絞り、ぼかしを使用するが、なるべく帯の内側に隠すように着付ける。帯揚げが少ない方が涼しそうに見えるため。帯締めは、羅組の透けたものや
細紐を撚りあわせたもの。長襦袢は絽、紋紗、麻などの薄物。半衿は絽のもの。
◆備考: 絽のきものには絽、紗のきものには紗、麻のきものには麻の長襦袢を合わせること。
◆月々の花
秋の花も用いる・黄蜀葵(おうしょくき)・紅蜀葵(こうしょくき)・鷺草・昼顔・夕顔・撫子・夏萩・睡蓮・水葵・糸薄(いとすすき)
◆月にちなむ柄
波・流水・舟・橋・[七夕]短冊、糸巻
【盛夏のきもの】七月のきものは、絽が主流です。絽、という生地は、縮緬を織る糸よりもやや強い撚りをかけた細めの糸を用い、糸目を透かして織ったもの。
留袖・訪問着・付け下げ・小紋・色無地、染めのきものはすべて絽を使用します。絽のほかには、紗や夏結城がありますが、これらは先染めの織物。お茶の場合には
あまりふさわしくないといわれますが、絣柄ではなく無地に限れば用いる場合もあります。
水浅葱や薄紫、銀鼠などのきものに、きものと同系の濃淡の帯や白地の帯を組み合わせると、色あいが涼しげです。
暑い夏には麻のきものが過ごしやすいのですが、越後上布、宮古上布、能登上布など、これらは絣の織物のためお茶には不向きです。麻の染物を探してみてもいい物が見つかります。
麻地の染め帯や麻の八寸、羅の袋帯など軽めの帯を合わせればとても軽やか。 下着もやはり麻のものが一番です。さらっとした肌触りの小千谷の麻絽の襦袢なら、暑い季節でも
過ごしやすいでしょう。

 
◆きもの: 絽、紗、麻などの薄物。初旬は、まだ土用のうちになるため絹布よりは麻が中心となる。越後上布、小千谷縮、能登上布などの染物で、白地が涼しげでよい。
立秋過ぎは、濃い色が好ましい。絽や紗の絹布も同じく、立秋の後は白地よりも濃色地のほうが秋立つ雰囲気になる。 柄は秋草が最も多く、いち早く秋の訪れを表現したい。
薄物のきものの美しさは、透ける美しさを上手に着こなすこと。
◆帯: 麻(上布)には麻の帯を用いる。絽には絽、紗には紗の袋帯を合わせ、袋帯以外なら、羅の袋名古屋帯や絽の染め名古屋帯などを締める。この頃は帯を軽くして、暑さをしのぐよう心がけること。
色は、淡いベージュや茶、水浅葱などさっぱりした色あいを選び、柄は無地かそれに近いものが美しい。配色は涼味を第一に考える。
◆小物: 帯揚げは絽や紋紗の無地やぼかし、帯締めは細めの組紐を使う。長襦袢は絹布には絹布、麻には麻を用いる。半衿も同様に絹(絽)と麻を用意して長襦袢の素材に合わせる。
履物は、エナメルまたはパナマなど、夏らしい素材の草履が軽やかで涼しげ。
◆月々の花
芙蓉・露草・はげいとう・萩・桔梗・尾花・撫子・藤袴・葛・朝顔・女郎花(おみなえし)・水引草・数珠玉
◆月にちなむ柄
蜻蛉・ほうずき・稲妻・[水にちなむ]渦巻
【涼を呼ぶ薄衣】
旧暦の八月一日を八朔といいます、後嵯峨天皇の時代に、初穂を宮中に献上したところからこの日を「田実(たのむ)の節」と呼び、農家では早瀬米を人々に贈る習慣が生まれたそうです。また、
徳川家康公が江戸城に入城したのも八月一日。それ以来、この日はめでたい「祝儀の日」となり、中元や暑中見舞いの習慣が始められたといわれているそうです。

 
◆きもの: 薄物と単衣。残暑の残っている初旬は、薄物の絽を着用する。紗は、絽よりも透けるため特に暑い日の日盛りにのみ着ることができる。
秋を感じさせる色、柄、素材を選ぶこと。 九月九日の重陽の節句は菊花節とも呼ばれ、この頃から単衣のきものに変える。一越縮緬や変わり縮緬、紋意匠などが向き、光沢の強い綸子は避ける。
色は深みのある紺や薄墨、朱、黄土、淡茶など黄色みを帯びた色が、自然の光に調和して良い。 柄は秋草を中心に、器物では虫かご、笛など。染め模様は単彩から彩りのあるものへ移る。
◆帯: 絽綴が最適。薄物には絽や紗の袋帯を七、八月と同様に用いてもいいが、秋を感じさせるためにはやや厚手のものを選ぶと良い。単衣のきものにも絽綴を締めることができる。ただし、
下旬には錦織りや綴帯、紬帯などに変える。色は中濃度の落ち着きのあるものがふさわしい。きものの色と濃淡でまとめると上品な装いになる。 柄はきものの柄に関連した図柄をあわせ、全体でひとつの調和を考える。
◆小物: 帯揚げは絽、帯締めは少し細めの組紐。長襦袢は絽で、半衿も絽。履物は夏草履の濃い色のものが美しい。
◆備考:きものの地は初旬は絽、中旬以降は単衣。長襦袢、半衿は九月いっぱいは絽。寒くなってきた場合にはこれに限らない。帯は絽のきものには絽の帯、単衣のきものには絽綴や錦織の帯を合わせる。
◆月々の花
秋の七草にちなむ花野・小菊・露草・吾亦紅(われもこう)・水引草
◆月にちなむ柄
松虫・鈴虫・虫かご・初雁・露芝・[秋祭り]笛、太鼓
【初秋に着る単衣】九月は、六月と同じように透けない素材を着なくてはいけないのですが、実際にはまだ残暑が厳しい毎日です。そこで、初旬は夏の透ける素材で、きものの色や帯び合わせで秋らしい着こなしを表現します。
秋の日差しは黄色みを帯びていますから、白すぎたり明るすぎたりする色はかえって寂しく見えてしまいます。 絽や紗などの薄物は、白地よりも濃い色、深い色の方が着映えします。色は、秋の野に咲く花の色を参考に。萩の花の紫、おみなえしの黄、
吾亦紅の茶など。長襦袢の色にも、きものと同系色や補色を選んでみるのもよいでしょう。
九月九日は重陽の節句。重陽とは、数字の陽の数「九」が2つ重なる月日で、五節句のひとつ「菊の節句」。これは中国の故事によるもので、平安時代の宮中では
「菊花節」と呼び、その日は文人を招いて詩文を作り、菊酒を振舞ったといわれています。一般の家庭では、菊酒のほか「着綿」の習慣がありました。菊の花に綿をかぶせ、その匂いを含んだ綿で体を清めると病を防ぐ、というものです。

 
◆きもの: 袷の季節になる。菊月と呼ばれる月に入る。生地は袷にふさわしい綸子が好まれ、地紋の美しい光沢のあるものが好まれる。色は落ち着きのある朱系統、黄系統、茶系統、墨色、小豆色などが多く、秋の色は
昔から実の色が好まれる。 柄は菊が圧倒的に多い。ついで経巻や宝尽くし、有職紋などが格調高い。無地の場合は裾回しに凝って、裾回しの模様で季節を表すのもよい。綸子のほかには縮緬を着用する。
◆帯: 塩瀬月とも呼ばれる十月は、袋帯、名古屋帯ともに塩瀬の染め帯が使われる。特に菊の花を手書きで描いたものが多く、帯ときものをおそろいにして楽しむのも良い。塩瀬同様に軽やかさのある織り名古屋帯も使われる。錦の袋帯なら、なるべく軽めのもの、
洒落袋帯も良い。柄は名物裂写や能装束写などが格調が高い。
◆小物: 帯揚げは、冬と同じ綸子や縮緬の無地や絞りを用いる。帯締めは、平打ちや冠紐がよい。冠紐は一年を通じて使用できるので、お茶の装いには重宝する。
長襦袢は冬と同じ袖無双、胴単衣。半衿も塩瀬羽二重や縮緬。履物はエナメルの草履。
◆備考:裾回しの色は、きものの色と同色にすると上品になる。また、柄の一色を組み合わせると個性的な装いになる。
◆月々の花
大輪の菊・乱菊・小菊・野菊・もみじ・銀杏・蔦・落葉
◆月にちなむ柄
稲穂・葡萄・柿・[秋祭り]笛、太鼓・[稲]雀、鳴子
【侘び茶の頃の初袷】茶室では、風炉の終わる季節。名残の季節ともいい、茶室の趣もやつれた風情のものが好まれます。名残というのは、濃茶や薄茶の茶葉にもとづく言葉です。茶壷に詰められたお茶が、前年の口切りから使われ始めて一年が過ぎ、
残り少なくなった茶を名残りと呼びます。十月に着るきものの、渋さと侘びの趣が感じられるよう装いたいものです。 渋い色あいのきものに、墨で風景模様を描いた帯、そして帯締めにだけ黄や紅などの紅葉の色を用いる。このような組み合わせがこの季節の代表的なものでしょう。
縮緬や綸子の中から季節感のある色、柄を選び、訪問着や付け下げは控えめな柄行、小紋は花や葉の散り柄が向いています。どちらも色数の少ない単彩に近いものがよいでしょう。
十月に着たいきもの・帯・小物についてまとめました

 
◆きもの: 袷で、生地は地紋のある綸子や緞子、紋意匠などを用いる。地紋は、紗綾形、菊、更紗華紋、梨地、古代裂写のような重みのあるものが向いている。
また、お茶席用には光沢のないほうを表にして、渋い雰囲気にしてもよい。縮緬はしぼの大きいものが深まり行く秋を感じさせる。
色は黄土色、ベージュ、枯葉色、抹茶色、朱色、臙脂などしっとりと深みのある色が秋らしいもの。そのほかグレーや紺なども趣きがある。 模様は秋の花や実、木の葉、また、絵巻風物の模様も好まれる。特に口切りの茶事は、茶人にとって新年と同じなので、
紋付きの訪問着など正装で出かける。
◆帯: 唐錦の華やかな袋帯が適している。しかし、狭い茶席にはあまり大きな柄は向かない。若くても中柄か小柄のもの。柄は能衣装写や有職模様、また染め帯なら秋の茶花を描いたもの。
◆小物: 帯揚げは、綸子や縮緬の無地や絞り。帯締めは、唐組や冠組が向いている。長襦袢は、袖無双の胴単衣で生地は綸子など。肌襦袢はガーゼ。半衿は白の塩瀬羽二重。 履物は深みのある濃い色のエナメルの草履で、かかとは若干高めがよい。
◆備考:開炉は、初釜と同じようにきものに華やかさをもたせる。
◆月々の花
椿(十月から使い、四月頃まで使える)・散り紅葉・銀杏・吹き寄せ・寒菊・山茶花(さざんか)・竹(竹の春)・松葉(四月初風呂の前まで使える)
◆月にちなむ柄
木の実・竹(竹の春)・鶴
【口切りの袷】お茶は、十月に昨年度のお茶が終わり、この月から新茶をいただくようになり、茶壷の口を切って新茶を取り出す行為を口切りといいます。炉開きと口切りは、それぞれに意味のある行事です。お茶が新しいものになるため、茶人正月ともいわれ茶の湯では新年と同じ、もしくはそれ以上と考えられています。
炉開きや口切りの茶事に招かれた場合は、紋付のきものに格調高い文様の帯を締めた正装で出かけます。
この場合のきものには格式が必要です。紋付で、格調の高い古典模様や、秋らしい絵付けの訪問着や付け下げがふさわしいでしょう。帯は錦織りの袋帯が用いられます。
また、文化の日には、さまざまな催し物が開かれ、立礼の席も多く設けられます。このような茶会の場合には、品のよい、少し華やかな小紋がふさわしく、帯も軽い織り名古屋帯などでよいでしょう。

 
◆きもの: 袷のきもの。生地は、地紋のあるものなら紋意匠が良い。梨地、紗綾形、むじな菊、唐草などの小柄で、光沢の少ないものが向いている。
縮緬なら、一越縮緬や変わり縮緬。 模様は、江戸小紋の義士小紋や家内安全などの柄が一般的。色はグレー、紫栗色、小豆色など、彩度を抑えた色あいを選ぶ。
紬で茶席に入る場合は、無地か染め紬。絣は高価なものであってもふさわしくないので控える。
◆帯: 袋帯、名古屋帯、昼夜帯、いずれも錦のものなら豪華さを強調したものではなく、また、漆箔、金銀箔を使ったものはいぶして光沢を抑え、単彩のものがよい。軽い小紋などなら紬の帯もよい。
柄は正倉院文様や唐草文様、さまざまな更紗など。全体を沈めにまとめるのがポイント。
◆小物: 帯揚げは縮緬の無地、帯締めも冠組の無地と、小物のすっきり簡素なものをそろえる。
長襦袢は袷になり、半衿は白の塩瀬羽二重、または縮緬。
履物は、革かエナメルの草履。かかとはやや低めのものが動きやすく、きりっとした装いにも似合う。コートは寒い時期の必需品。道中着がふさわしい。濃い色の無地か小柄な模様がきものにあわせやすい。
◆備考: きものの色が渋い場合には、長襦袢の色や柄で装いに華やかさを添えるとよい。
◆月々の花
水仙・万両・蝋梅・(菊・椿・竹)
◆月にちなむ柄
雪景色・枯野・冬山・樹氷・浮寝鳥・柚子
【年の暮れの袷】お稽古用のきものの生地は、ウールや紬などの手軽な素材で、と考える場合が多いのですが、どちらも横張りが強いので注意が必要です。新しい素材では合繊があります。洗濯機で洗うこともでき、種類、色柄ともに豊富です。
小紋か無地で、若い人なら半幅帯を蝶結びか一文字にして小さめに結びます。落ち着いた好みの人は織り名古屋帯の八寸を合わせます。 きもの色としては、明るい色あいであまり多彩でないものがふさわしく、小紋は小柄なものを選ぶとよいでしょう。
ピンからキリまで、という言葉がありますが、十二月は一年の最後、キリになります。このキリに桐をかけて、きものや帯の柄に使用します。

 
◆きもの: 松の内は紋のあるきものが正式。色留袖、訪問着、付け下げなど。若い人は中振袖を着用する。生地は光沢のある綸子や緞子。縮緬なら、しぼの大きいものがよい。
地紋はやや大きめの本紋や紗綾形、立涌、霞、青海波、流水、大唐草などいろいろな吉祥文様の中から選ぶ。 色は新春にふさわしい明るい薄色が中心で、ピンク、ブルー、薄紫、クリーム、
ベージュ、若草色など。グレーも明るいものがよい。模様は吉祥文様や御所解文様、有職文様などで、紋は背に一つ縫い紋が多く染め抜き紋は格が高くなる。
◆帯: 唐錦、色錦、箔錦、箔一丁、佐賀錦など、さまざまな錦があり、主に袋帯を用いる。 柄には名物裂写、能装束写、吉祥文様、有職文様など、格調の高い文様がふさわしい。金銀糸や色糸の入った
豪華な帯で、年齢に適した華やかで上品な組み合わせを楽しむこと。
◆小物: 帯揚げは綸子の無地やぼかし、総絞りなど華やかさのあるものを。帯締めは冠組などで、上品な色を選ぶ。 長襦袢は袷で、半衿は白の塩瀬羽二重。着物によっては配色のよい伊達衿を重ねる。
履きものは、エナメルや佐賀錦の草履。色はきものの色に合わせた明るい色が初春らしい。かかとはやや高めのものが豪華なきものにはふさわしい。
◆備考: コートは訪問着や付け下げには、綸子や紋意匠の道行きが一般的。防寒のためなら、ビロードやカシミヤなど暖かな素材のものを用意しておくと重宝する。
また、寒いときには長襦袢を袖無双の袷仕立てにするとよい。
◆月々の花
松竹梅・(松)老松・若松・松菱・梅の古木・枝垂れ梅・槍梅・梅の丸・南天・柳(結び柳)・寒牡丹・福寿草・雪柳
◆月にちなむ柄
鶴・亀・丹頂鶴・折鶴・寒雀・梅に鶯・[吉祥文様]鳳凰、宝尽くし、宝船、扇面・[書初め]色紙、短冊・独楽・毛毬・寿文字・福文字
【新春を寿ぐ袷】格式のある茶会の多い季節ですが、この場合には色留袖や訪問着を着る人が多く、白羽二重の重ね衿が改まった雰囲気を感じさせます。若い人は振袖や訪問着を着用します。
初釜にはこのほか付け下げや無地も着ます。そして、すべてのきものに紋を入れます。きものの模様は吉祥文様や格式ある古典文様、または草木の模様など。
きものの模様は、あまり大胆な構図や大柄で派手な模様は周囲との調和を乱す恐れがあるので避けるようにしましょう。これらのきものにあわせる帯は袋帯。錦織りの重い帯で、
吉祥柄、古典柄、名物裂など、いずれも格調の高い柄を選びます。

 
◆きもの: 袷の着物で、生地は綸子、紋意匠、縮緬、紬など。地紋のあるものは、小柄な吹雪や霰、青海波、小唐草、亀甲、色紙などが季節にふさわしい。縮緬の場合は、一越縮緬か変わり縮緬が尚良い。
色は、紺、赤紫、墨、蕨緑、黄土などのあたたかみのある落ち着いた色を用いる。 夜の茶事では茶室内が暗いため、薄色の着物が引き立つ。また、二月の前半は寒中、後半は早春のため、装いも合わせる。
◆帯: 染め名古屋帯で、早咲きの春の草花などを染めたものが季節を表現しやすい。
◆小物: 帯揚げは、綸子の無地か絞り、帯締めは多少遊びをいれても。 長襦袢は袷を用いる。半衿は白の塩瀬羽二重か縮緬。 履物は、紺や臙脂、茶や朱など、濃い目の色を合わせると足元がすっきりとする。かかとはやや高めを選ぶとよい。
◆月々の花
梅・猫柳・寒木瓜・早蕨
◆月にちなむ柄
冬木立・淡雪・氷割・鶯・[節分]絵馬、鈴
【立春の袷】立春の前日は節分です。節分の日は、厄除けの意味を持つ鱗や七色の紐などが好まれます。赤、白、紫、黄、緑、碧、金の七色の紐は帯締めに使用することが多く、
鱗は帯の模様として多く見られます。
この季節らしい模様といえば、雪。雪持ち笹、雪輪、吹雪、牡丹雪など、雪に関する模様は数多くあります。梅もまた、新春の季節には尊ばれる花です。他の花に先駆けて、寒さをしのいで清らかに咲く梅は、おめでたい植物のひとつでもあります。
枝梅、光琳梅など、数多く紋様がありますが、春にふさわしいすっきりとした色あいが良いでしょう。

 
◆きもの: 着物は袷。綸子、縮緬、緞子、紬などの中から春らしい図柄を選ぶ。縮緬の場合は、一越縮緬や変わり縮緬など。地紋のある綸子や紋意匠は、春の風景模様や流水、霞、波、花などさわやかさのあるものを。
色は、薄色で、白っぽくかすんだものが春らしい。あずき、鼠、桜、菜の花、若草、水色なども、やや濁らせた色あいがよい。
模様は、春の情景のようにぼかし染めがよく似合う。あるいは無地の紋付きなど総じて控えめに。
◆帯: 袋帯を控えめに装う場合は、ふくさにあるような名物裂の写しなど格のある柄で、小柄なものを選ぶとよい。
◆小物: 帯揚げは綸子のぼかしや絞り、帯締めは観世撚りや冠組などの細めのものを用いる。 長襦袢は袖無双の胴単衣で、無地かぼかしのものを。 半衿は
白の塩瀬羽二重か縮緬。履物は、きものの色に合わせた明るい色のエナメルの草履で、かかとは少し高めがよい。
◆備考: 上旬には、袷のコートを用いるが、中旬以降は単衣、下旬には単衣と紗袷になる。着物の色との濃淡に合わせると上品にまとまる。
◆月々の花
桜・枝桜・枝垂れ桜・散り桜・たんぽぽ・すみれ・春の花野・桃・こぶし・れんぎょう・桜草
◆月にちなむ柄
[海開き]貝尽くし、貝桶、貝合わせ・[雛祭り]笛、太鼓
【春尽くしの袷】三月三日は雛祭り。五節句のひとつとして数えられます。お雛様を飾り、桃の花・菜の花を添えて、女の子らしい華やかなお祭りです。
雛の節句の頃の茶会では、金平糖や雛あられなどを「振り出し」という筒状の菓子器に入れ、ころころと振り出しながらいただくことがありますが、このような
楽しい茶席では、色数の多い華やかな雰囲気の小紋も似合います。
茶室では、炉もそろそろ終わりに近づき、釣り釜がかかります。
利休忌があるのも三月。出掛ける際には、紋付きの色無地に地味目の帯を合わせます。無地の地紋は、霞や雲、青海波、水の流れ、または名物切れ取り、唐草模様など格式のあるものを選びます。
花模様ならば、華紋になっているものを。
きもの色は、春の花の色から落ち着いたものを選ぶとよいでしょう。帯は、黒地の喪の帯は用いません。銀鼠、海老茶、海松の緑、淡茶、灰色などの地に季節の花や蓮の花を手書きで染めた名古屋帯を合わせます。また、織りの名古屋帯なら
名物裂や古典模様の小柄なものがよいでしょう。帯締めや帯揚げも派手な色は避け、きものを同系色の地味目な色で目立たないようにします。

 
◆きもの: 光沢のある綸子や緞子、紋意匠が中心になる。茶席での一般的な着物といえば、軽い訪問着か付け下げ。紫や薄紅、水色、墨色、薄茶、薄緑などの色目を中心に選ぶとよい。
模様は、道長取りや御所解模様、桜や牡丹、藤などの季節の花がよい。
◆帯: 春の柄を染めた塩瀬の帯や、箔錦に花を描いたものがふさわしい。織り帯ならば、箔一丁の単彩のもの、金箔や白金箔、銀箔の錦など。
◆小物: 帯揚げは綸子の無地やぼかし、帯締めはきものの種類によって決めるが、冠組のものならたいての着物に合う。 長襦袢は単衣になり、薄色の無地か春らしい小紋柄を用いてもよい。 半衿は白の塩瀬羽二重をかける。履物は、きものの色に合わせた明るい色を選ぶ。
◆備考:
◆月々の花
木蓮・山吹・小手毬・春蘭・青柳・牡丹・藤・芍薬・(竹の秋)竹
◆月にちなむ柄
燕・鹿・青麦・花見幔幕
【春の花どきの袷】茶室を離れて、自然の中に誂えた野点の茶席が多くなってくる頃です。ひとくちに野点といっても、茶会の趣旨や会場によって、中振袖、訪問着、付け下げ、小紋と着る着物の格が異なります。
しかし、春爛漫の色鮮やかな季節の戸外ですから、単彩に近い色あいであっさりした模様のほうがかえって着映えがすることがあります。
満開の桜、つつじ、牡丹の花と競い合うのではなく、その一枝を着物にのせるような、控えめな装いが好ましいでしょう。
|